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カンロニン:用法用量を守って正しくお使いください

I will be able to teach zazen, the sitting-meditation, to everyone in English.都内にある禅宗寺院の中の人。仏教、イベント、本、教育、組織、アナログゲームなど、日々考えていることを綴ります。現在仏教になじみのある方、まったく興味のない方、みなさまに読んでいただけたら幸いです。

作り、食べ、片付ける「食」のあたりまえ

お坊さんが出す本。こころが調う系のなかでも、オススメの1冊。
タイトルは「お坊さんにまなぶこころが調う食の作法」、ということでテーマは食である。

お坊さんにまなぶ こころが調う食の作法

お坊さんにまなぶ こころが調う食の作法

著者の星覚さんは曹洞宗のお坊さんで、いまベルリンで禅を伝える活動をしている。そのベルリンに行く前、彼はヨガスタジオにて坐禅とお粥の会を開いていた(と思う)。いつ食についての御本を出されるのだろうかと、楽しみにしていた。
さて、臨済宗の私から見ると、曹洞宗の方は作法(型)をとても大事にしていらっしゃる。そんな曹洞宗のお坊さんが書いた本なので、作法を軸に、仏教や人の営み(おもに食)について語りかけてくることばかり。

たとえば、
修行道場では、数十人の集団が同じタイミングで食べ始めます。そのため、よそってもらう&食べる&片付けるまでの作法が決まっているわけですが・・・。

一、食べる作法:洗い物まで組み込まれた合理的な作法(pp.30-31)

  • 以上が永平寺の食事の基本的な流れです。これらの作法は朝、昼、夜、それぞれの器の扱い方が異なるため、すべて覚えるだけでも大変苦労します。修行生活の最初の半年はこの作法に慣れる期間といっても過言ではありません。
  • しかし慣れてしまえばこれほどラクで理にかなった作法はありません。大変手間がかかるように見えますが、一つひとつの動作を集中して行うため所要時間は40〜60分ほどと実は非常に効率的に食事を頂くことができます。
  • その効率のよさは一人、二人ではなく大人数になるとはっきりとわかります。〜〜。

集団生活の知恵と言ってしまえばそれまでですが、お伝えしたいことはもっと大きなことです。お伝えしたいこととは、道理がある、ということ。
一人暮らしの方。お店に入った時(ラーメン屋さんとか)ひとりでご飯を食べている人は、本当にひとりでご飯を食べているのでしょうか。
そのご飯を作ったのはだれでしょうか。その野菜やお肉は誰がつくって、誰がはこんだのでしょうか。その器は。あなたがそれを買うためのお金は。その時間は。

なにをあたりまえな。

まったく当たり前のことですが、その当たり前には道理が付いている、というのです。
作法というと形式にこだわるあまり、”じゃあ形だけしていればいいんでしょ”となりそうですが、そうはなりません。しっかりと道理を振り返らせることも修行のひとつだそうです。
当たり前を当たり前にする。曹洞宗では、道元さんという方が、「食」に関する多くの言葉を残していらっしゃいます。その言葉は、当たり前のなぜ?への答えのヒントとなり、曹洞宗のお坊さんたちは修行することができるのです。

作法とは具体的です。具体的だからこそ、どんな人であろうとも日常に活かすことができます。この本に書かれていることは、作法についての羅列ではありません。星覚さん独特のわかりやすい語り口と、優しさにあふれています。どうかこの本を読んで、ぜひ禅の作法を、食事のときに取り入れてみてください。作り、食べ、片付ける「食」のあたりまえを、まず形から触れてみてはいかがでしょうか。

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星覚さんは、本に書いてあるような語り口と心持ちで、生活していらっしゃいます。心穏やかに、日々”食べていく”ことにも執着せず。そんな彼の精進を、本当に尊敬します。各コラムの最後(とその前くらい)の文章は、本人らしさにあふれています。
「近くならひとりで行くと早いが、遠くなら大勢で行くことだ(If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.)」
社会的動物である私たち。けして一人で生きて行くことはできません。大勢で生きています。大勢のなかのひとりとして、私たちの日々の営みを見つめる言葉がここにあります。
多くの人に読んでいただき、禅の道を歩んでもらえたら幸いです。

星覚さんの御本

坐ればわかる #大安心の禅入門 (文春新書 940)

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身体と心が美しくなる禅の作法―だれでもできる一日一禅

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禅の言うとおりにやってみよう

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